第1章 素直になれなくて(舞&光秀&家康)R18 有
光秀はの様子を思い出していた。
(あれで良かった。)と自分に言い聞かせた。
が一針ずつ丁寧に縫った羽織を眺めながら、がどれほど想ってくれているか、その仕事ぶりから感じてしまった。
家康とが気兼ねなく話している様子も見ていて少し気になった。
(あの二人お似合いだな。)と思ってしまったのだ。
が500年後に帰るのが分かっていて深入りして情を移せば自分の身も破滅し兼ねない。
光秀は静かに心の奥底にへの気持ちをしまい込み、潜入の準備を開始した。
それから2週間、光秀に会えないまま、ワームホールの開く日が近づいていた。
(佐助君は帰らないって言ってた。私は…)
ここでの暮らしは楽しかった。
辛い事もあったけど、家族もいる500年後に帰る事がベストだと思った。
でもふと浮かぶのは光秀の顔だった。
会えないまま、さよならも言えないまま、あの部屋での事が最後になるのは嫌だった。
でも時間がないし、光秀は帰ってこなかった。
ここでの三カ月間を思い返していた。
光秀の事をもっと知りたいと思ったが、本当はもう十分だった。
裏の仕事をしている光秀が自分に言える事など少ないと分かっていたし、何を考えているかも本当は心の奥底で分かっていた。
あんな冷たい言い方をしたのは私を諦めさせるためだ。
500年後に帰った方が幸せだっと願って突き放してくれた事も分かっていた。
私を面白がって本気で笑っている様子は嘘だとは思えなかったし、光秀さんが触れてくれた手は大切なモノを愛でるかのように優しかった。
見えないものを見ようとするよりも、自分の知ってる真実を大事したら良かったんだ。
はまた涙がこみ上げてきた。
文を書こうかと思ったが、光秀には書けず、ずっと気にかけてくれていた家康にだけ書いた。
信長様に言えば引き留められると分かっていたので、遠くのお使いに行ってくる女中に言い残し、馬に乗ってワームホールの場所へと向かって行った。