第1章 素直になれなくて(舞&光秀&家康)R18 有
は自室に戻ろうとすると、部屋の前で家康が待っていた。
(…なんとなくそうかなと思って来てみたらやっぱり泣いてるよ)
「ほら。泣かないの。さっきみたいに可愛い顔して笑わせてよ。」
家康は、に花を持って来ていた。
「ぐすん…なんで家康…ここに」
「今日の軍議で、光秀さんがしばらくまた外で仕事をするって言ってた。しばらくは帰ってこないよ!がそれを聞いて寂しがるんじゃないかなって」
「危ない仕事なの?」
「俺たちの仕事は常に危険だよ。まぁ光秀さんなら大丈夫でしょ!」
「そっか、そうだよね。私が悩むことじゃないか」
「うん、はヘラヘラしてたら良いよ。その方が光秀さんも安心するんじゃない?」
(フラれたからって嫌われたわけじゃないし、安土のみんなが大事って気持ちは変わらないもんね)
「言いたくなければ良いけど…なんで泣いてたの?」
「あぁ…ははは、光秀さんに小娘相手に本気にはならないってズバッと言われちゃった。好きってまだ言えてなかったのにな。」
「そっか。」
泣いているに同情したが、家康は内心ホッとした気もした。
じぶんが淡い恋心を抱いているからなのか、光秀と関わりが危険な目に合う事が不安だったからかは分からない。
「ありがとう家康!家康はヒーローだね。この紫の花は何?…可愛いね」
「、ひーろぉーって何? この花は桔梗だよ。誰かさんをいつでも思い出せるでしょ」
「家康って…もぉ、大好き!…ひーろぉって言うのは私の故郷の言葉。困ったときに現れて救ってくれて味方になってくれる人の事。」
家康の優しさに救われ、は涙をしまった。
(光秀さんには言えなかったのに俺には簡単に言うんだ、多分意味合いが違うんだろうなぁ)
「ふぅん。いいね。俺はのひーろー!」
戦国武将が「ヒーロー」と口にするのが可笑しすぎて、はアハハと大声で笑った。
「あんた笑ってる方がいいよ」
は花をひとつ押し花にして、大事に布でくるみお守り替わりに胸にしまった。