第1章 過ち
手のひらサイズのガラス瓶に詰められている、見るからに怪しそうな錠剤たち。
それを定期的に飲み直して、しかも副作用アリって…殺す気…!?!
「と、とりあえず飲んでみようよ。時間ないし、多分大丈夫だから…」
"多分"に命預けたくないんだけど…!!
「ま、待ってカラ松くん!12時間前後って、私、学校には普通に女の子として行きたいんだけど…時間調整とかできないの…?」
「時間調整…?ちょ、ちょっと待ってね…えっと……え…?」
「…おいどうしたんだよ、なんて書いてあったんだ?あぁ?」
デカパン博士から貰った薬の説明書のような紙を読んでいるカラ松くんの顔は、なぜかみるみる赤く染っていっていた。
なんて書いてあったんだろう。
「ーーーきっ、キスをしたら12時間経たなくても元に戻れるだぁ!?!?」
「十四松、シー!!声大きいって!!」
「意味わかんねーよ、この薬!!」
「ぼ、僕も意味わかんないけど、そう書いてあるし…どうしても戻りたい時は、キ…キ…」
顔がプチトマトになってしまったカラ松くんが、震えながらガラス瓶を握りしめている。
そんなカラ松くんのことを、十四松くんも混乱しながら見つめていた。
二人とも顔が赤くなっちゃってるよ…。
キス、かぁ…。
副作用の効果が現れる前に、元に戻れる方法があるのは嬉しいけど、よりによってなんでキスなんだ。
デ○ズニー映画じゃあるまいし、する相手がいない私に、『キスをしたら元に戻れる』なんて言われましても、そんなの、無いも同然じゃないか…。
「あ、あはは…やっぱり男になるのは諦めた方がいいみたいだね…」
「…お前ら、そんなところでなにやってんの?」
「「「っ〜!?!」」」
遠くから聞こえてきた、誰かの声。
この堂々とした態度からして、松野家の一員だと思ったので、私は手に持っていた薬を急いで飲み込むことにした。
さすがにこれ以上は、秘密をバラしたくないからね。