第1章 過ち
「だから、これはダメなんだって…」
「十四松くん!ちゃんと説明するから止まって…!」
「うわっ、誰…!?」
「あ…立花さ…」
茂みからいきなり姿を現した私を見て、十四松くんが驚いている。
誰って、一応、私たち同じクラスなんですけど…まぁいいか。
とりあえず、カラ松くんは薬を持ってきてくれたみたいだから、変人だと思われちゃうかもしれないけど、私から十四松くんに事情を説明してみよう。
薬の話はそれからだ。
「あ、あのね!十四松くん、実は私ーー」
ーーと、カラ松くんにした話と、同じ内容を十四松くんにも伝えてみると、十四松くんは物分りがいいのか、案外すんなり「ふーん」と納得してくれていた。
話がわかる人達で安心したよ。
これで二人が"例の松野くん"じゃなければ、もっと安心できるんだけど…。
現段階じゃまだ分からないな。
二人とも、私に好意があるようには見えないし。
それにしても、二人とも顔がそっくりだ。
さすが六つ子…。
「とりあえず、デカパンから薬は貰えたから、これ飲んでみようよ、立花さん」
「う、うん…」
私から頼んでおいて申し訳ないんだけど、得体の知れない薬を飲むのって結構勇気がいるんだね。
副作用とか大丈夫なのかな、この薬…。
「あ、あの…ちなみに効果は何時間くらい続くのかな、これって…」
「え、えっと…ちょっと説明書読んでみるね。この薬はーーー」
不安そうにしている私のために、カラ松くんは説明書を丁寧に読み上げてくれていた。
説明書いわく、どうやらこの薬の効果は12時間前後で切れてしまうらしく、11時間経った辺りから副作用で体が熱くなってしまうので、それを目安にして周りに見つからないように薬を飲み直す必要があるらしい…って、え?なんだって?
副作用で体が熱くなるってなに…!?
絶対に怪しい薬でしょ!!それ!!
本当に大丈夫なの…!?
死んだりしないよね!?
立花春奈として、二回も死ぬの嫌なんだけど…!!
「ふ、不安な気持ちはわかるけど、性別はちゃんと変えてくれるらしいから…大丈夫だよ、立花さん!」
「ほ、本当に…?本当に大丈夫なの…?」
不安すぎて逃げ出したいレベルなんだけど…。
錠剤の薬で副作用アリとか、一番怖いでしょ、こんなの。