第4章 双子
顔を真っ赤にしながら、両手を顔の前でブンブン左右に振っているおそ松くんが、キレながら「お前はぜんっぜん可愛くないから!」と連呼している。
さっきは私の顔ジーッと見つめながら、真顔で可愛いって言ってくれてたのに。
口が滑ったのかな…それとも本当に全然可愛くないのかな…。
まぁおそ松くん、春奈のことも言うてそこまで好きじゃないもんね…。
自分に害のない女の子だから、興味があるだけで。
「おそ松くんひどいよ!」
「ひどくねぇし!つーかお前さっさと出てけよ!俺たち六つ子の間に割り込みやがって!邪魔なんだよ!
ーーーぐふっ」
「…え、ええええ!?!」
ぶ、ぶん殴った…!!
居間に入ってきたカラ松くんが、おそ松くんの顔を思いっきり…!!しかもグーで…!!
「いってぇな!!なにすんだよカラ松テメェ!!」
カラ松くんにぶん殴られて、勢いよく畳に倒れたおそ松くんが、怒りながら起き上がっている。
殴られたおそ松くんの頬が真っ赤っかだ。
カラ松くん、もしかして本気で殴っちゃったのかな。
「…おそ松兄さん、春馬くんに謝って」
「は?なんで俺が…」
「謝って、早く」
「か、カラ松くん、あの…」
「春馬くんに謝ってよ」
どうしよう、カラ松くんが完全にブチキレちゃってるよ。
あのお手本のような不良をやっている十四松くんでさえも、ブチギレて兄弟のことを殴っている姿は見たことがないのに。
最初は見間違えだと思ったが、私のことを守ろうとしている少年は、どこからどう見てもあのカラ松くんだった。
「…嫌だね」
「兄さん!!」
温厚そうに見えて、カラ松くんはちゃんと次男という立場を真っ当しようとしているのだろう。
間違った長男の行動を止められるのは、自分だけだと、カラ松くんは思っているのかもしれない。
「喧嘩しちゃダメだよ、二人とも…!」
「喧嘩してないし。カラ松が勝手にキレてるだけで、俺は別に喧嘩なんか」
「おそ松くんは静かにしてて!」
「なんでだよ!」
このまま彼らの仲が、更に悪くなってしまったら私のせいだ。
おそ松くんに酷いことを言われてしまったのは事実だが、私は松野兄弟に襲われたくないだけで、別に彼らに不仲になって欲しいわけではない。
だから、できれば穏便に事を済ませたいんだけど…。