第4章 双子
「わたっ…僕、気にしてないから!カラ松くん、落ち着いて…!僕は大丈夫だよ!」
「…っでも」
「大丈夫だって!僕、課題終わったから、一緒に遊ぼうよ!カラ松くん!」
「………」
「カラ松くん、もう行こ…!!」
私の目の前で立ち竦んでいるカラ松くんの腕を、力強く引っ張ってみる。
しかし、見た目の割にと言ったら失礼だが、カラ松くんは思いのほか力持ちなようで、私がどれだけ強く腕を引いても、彼の体はビクともしなかった。
か、怪力ゴリラなの…!?
結構力入れてるはずなのに、全然動いてくれないんだけど…。
こ、こうなったら、おそ松くんにも協力してもらうしかなさそうだ。
「あ、あれは…ただのじゃれ合いだから!別に僕、傷ついたりしてないから…!ね!おそ松くん!」
「いや別に俺たち、じゃれ合いなんかしてな…」
「おそ松くん!!」
「はい、そうです、じゃれ合いしてました」
よし、とりあえず長男はねじ込めた。
めちゃくちゃに棒読みだったけど、これでもうおそ松くんくんがカラ松くんに突っかかってくることはないだろう。
…あれ、カラ松くん、冷静になったのかな。
心做しか、さっきよりも表情が柔らかくなってるような気が…。
「カラ松くん…?あの…」
「…本当に傷ついてない?」
「う、うん!傷ついてないよ!」
「…そっか、わかった…遊びに行こっか」
よ、よかったー!!!
カラ松くんが納得してくれて…。
おそ松くんは頬を思い切り殴られて痛そうだったけど、今回はきっと私のためを思って怒ってくれたのだろう。
ありがとう、カラ松くん!
おそ松くんには暴言を吐かれてしまったが、なんだかんだ言って今日は、松野家のみんなと少しだけ親睦が深まったような気が、しないでもない一日だった。
春奈としてみんなに会うのは危険だけど、春馬の状態なら、多少仲良くなっても問題はないよね。
きっと。