第4章 双子
昨日までは「早く出てけよ」っていう目線で私のことを見ていたのに、手のひら返しとはこの事か。
まぁ、春奈の存在があったところで、おそ松くんは、あわよくば私に出て行ってもらおうと思ってるんだろうけど…。
…春奈のことだけは、諦めて欲しいな。
私の未来のためにも。
「…いやです」
「えーなんで?」
「ぼ、僕の妹は人見知りなので…」
「ケチくせぇなぁ、いいじゃん紹介してよ」
「あはは、僕で我慢してください、僕がいますよ、おそ松くん!」
「いやいらないいらない、死ぬほどいらないからやめて気持ち悪い」
「気持ち悪い!?」
いやそこまで全力否定しなくても…!!
別にいいじゃん、そっくりなんだからさ…!!
てかそっくりどころか、性別が違うだけの同じ人なんだから、どっちでも大して変わらないのに…。
「なんか萎えたわ…」
う、なにその、私のせいで気分だだ下がりみたいな言い方…。
私の肩から離れて、ちゃぶ台の上で頬杖をつき始めたおそ松くんが私の課題を見守っている。
彼はまだ諦めていないのだろうか。
それとも、本当に暇なのだろうか。
時間があるなら、早く手を洗って服を着替えて欲しいんだけど…。
…課題やってるところ見られてると、なんか緊張しちゃうな。
答え間違ってないかな、字とか汚くないかな…。
「てかさー…」
「う、うん?なに…?」
「兄弟で同じ顔だと、何回も間違われたりして大変じゃね?嫌になるよな〜本当に…」
なんて言って、おそ松くんはポロッと自身の兄弟の愚痴のような話を私にしてきたが、私の場合は男女の双子なので、似てても間違われるようなことはないと思うんだけど…。
性別が違っても間違われるくらい似てるのかな、春馬と春奈って。
「そんなに似てますか?」
「似てる似てる、マジで同一人物レベル」
「え、そんなに…?」
「いや似てるから。まーお前も近くでよーく見てみたら、案外かわい…」
「…え?」
「いいいいや可愛くない可愛くない!!今のなし!!お前はめっちゃブス!!」
「え、ええ!?!」
なんて酷いことを…!!
別に春馬のこと可愛いって褒めてくれたっていいのに!!
同じ顔なんだから、ブスとか言わないでよおそ松くん!