第4章 双子
今日は色んなことがありすぎて疲れちゃった。
雨のせいで全身ずぶ濡れになっちゃったし、帰ったら軽くシャワーだけでも浴びたいな…。
あ、でもシャワーは先に帰った一松くんが使ってるかもしれないから、やっぱり私は大人しく銭湯の時間まで待つことにしよう。
「ただいま〜」
なんて独り言を呟いたところで、返事は誰からも帰ってこないだろうけど………ん?
「おかえり。遅かったじゃん、寄り道してたの?」
「え…」
ーーー返事が帰ってきた。
ちょ、チョロ松くん…!?
え、なんで玄関にいるの!?
もしかして、私のことずっと待ってたの…!?
一体なぜ!?
「…なんでずぶ濡れ?」
いやなんで?はこっちのセリフなんですけど…。
前世ではまったく話しかけてこなかったのに。
私に大事な用でもあるのかな…。
「え、えっと…傘、忘れちゃって…」
玄関で焦っている私の肩に、チョロ松くんが手を置いてきた。
え、な、なに…?
もしかして、逃げられないようにされちゃったのかな…。
今朝も同じことを思ったが、本当にチョロ松くんは会話する時の距離感が物理的に近いなぁ。
私の背後は玄関の扉だから、逃げようと思えば逃げられるけれど、なんで私は男の状態でチョロ松くんに迫られてしまっているのだろうか。
女じゃなければ安全だと思ってたのに、むしろ前世よりも危険な状態になっちゃってるんですけど…。
彼の大きな眼鏡に私の顔が反射している。
やっぱり眼鏡を掛けられると、相手の表情が分からなくなるから、より一層、怖いな…。
「あ、あの…近いんですけど…」
「…昨日さ、抜き打ちテストあったよね。そっちのクラスにも」
「え…?あ、あぁ…確かにありましたね…はい…」
ぬ、抜き打ちテスト…?
確かに3年生になってすぐに抜き打ちテストがあったけど…それの何が問題だったんだろう。
私は数年のブランクがあったせいで、抜き打ちテスト、結構ボロボロだったからなぁ。
チョロ松くんに、テストの結果を見せろ!とか言われちゃったら、どうしよう…。
「…あの、抜き打ちテストが…なにか…?」
「…てんてーが」
せ、先生のことてんてーって言ってる…!!
って、これは前世でも同じだったか。