第4章 双子
「…あの、タオル洗って返しま」
「いやいいよ、タオルくらい。俺が持って帰るよ」
「え…でも」
「俺の意思で貸したんだから、気にしなくていいよ、そんなこと…てか敬語やめね?俺たちタメじゃん」
た、タメ…!?なんで同じクラスでもないのに、同い年だって分かっただろう。
やっぱり何も言われなかったけど、私の顔を見て、春馬の双子だって察したからなのかな…。
我ながら白々しいけど、ここは知らないをフリして聞いちゃおう。
「え、えっと…貴方も一年生なんですか…?」
「ん?…あぁ、ごめん。実は俺、君に似てる人を知っててさ、あまりにもそっくりだったから双子だと思ってたんだけど…もしかして違った?」
「あ、あー…春馬のことですか?そうですね、彼は私の双子の兄です」
「ははっ、やっぱり?だよね、同じ顔だったから驚いたよ…ところで、君の名前は?俺は一松」
「私は春奈です…!あ、春奈だよ!」
「春奈ちゃんか!クラス違うけど、これからよろしくね」
「う、うん…!!」
なんだ、一松くんめっちゃいい人じゃん…!!
こんなにも優しい男の子が、私のことをいきなり襲うとは、とても考えられないーーがしかし、それでも油断は大敵だ。
どれだけ怪しくなかったとしても、例の松野くんの容疑者は六人なのだから。
ちゃんと警戒していかないと、痛い目を見るのは私…。
「…ん?」
「ん?…あ、ごめん。握手は嫌だった?」
「いや!全然、そんなことは…」
一松くんがいきなり片手を差し出してきたので、一瞬戸惑ってしまったが、私は急いで一松くんの手を握りしめることにした。
「よ、よろしくね!一松くん!」
「あぁ、よろしく」
う、爽やかな笑顔が眩し…ん?
「………」
なんか…握手が長いような気が…。
というか一松くん、手めっちゃ熱いんだけど…雨に打たれて全身が冷たくなってるはずなのに、子供体温なのかな…。