第4章 双子
「だ、だから…その…」
「…?」
正直に言おうか迷っているのか、一松くんは「あー…」と言いながら頭を抱えていた。
「ーーーるから…」
「え、今なんて…」
屋根に当たっている大きな雨のせいで、一松くんの小さな声は雨にかき消されてしまっていた。
彼は何を私に伝えたかったのだろうか。
なんて不思議に思っていると、何も分かっていない私のことを見兼ねたのか、一松くんは先程よりも少しだけ声量を上げて「透けてる…から…」と恥ずかしそうに呟いていた。
「あ…」
透けてるって…あ、ほ、本当だ!
めっちゃ透けてるじゃん…!!私の下着…!!
だから言い難そうにしてたんだ、一松くん…。
「す、すみません…ありがとうございます…」
下着の色が悪かったのか、私の下着は思っていた以上にガッツリ透けてしまっていた。
私の察しが悪かったせいで、一松くんには嫌な思いをさせてしまったな…。
ブレザー、ちゃんと着直そう。
「…大丈夫?寒くない?」
「だ、大丈夫ですよ!さっきいっぱい走ったので、むしろ暑いくらいで…」
と、元気に笑顔で返事してみたものの、一松くんはまだ私のことを心配しているのか、カバンの中から綺麗なタオルを取り出していた。
「そのままだと風邪引くかもしれないから、これ使って…あ、これ新品だからちゃんと綺麗だよ」
「え…そんな、貴方も濡れてるのに…」
「俺は風邪とか全然引かないタイプだから大丈夫だよ。だから…気にしないで使っちゃって?」
「い、いいんですか…?新品なのに…」
「いいよいいよ、そんな気使わなくて。そのタオル安物だし、遠慮なく使っちゃってよ」
「あ…ありがとう、ございます」
な、なんて爽やかな笑顔なんだ。
前世では挨拶すら交したことがなかったから、遠目で見てて「好青年だなぁ〜」くらいにしか思ってなかったけど、実際に関わってみると本当に優しくて爽やかで…いい人だ!!
スカートめくり野郎のおそ松くんとは大違いじゃないか…。
優しすぎて感動しちゃったよ、お姉さん…。