第3章 ファーストキス
ーーーあ、そういえば私…。
「あ、あのさ、カラ松くん!」
「?」
キスをする時間が来てしまった。
学校側は、私の性別が女だということを知っているから、カラ松くんには手伝ってもらう必要があるんだけど…。
手伝ってくれるかな、カラ松くん。
とりあえず勇気を振り絞って、今ここで「キスをして欲しい」って頼んでみる…って、そんな小っ恥ずかしいこと、言えるかぁ!!
カラ松くんが例の松野くんかもしれないのに!
そんなこと言ってしまったら、事情が分かっていたとしても、かなり危険じゃないか。
外でも例の松野くんは猛獣だから、何されるか分からない。
でも言わないと遅刻しちゃうし…。
ど、どうしよう…。
カラ松くんが困っちゃってるよ…!
「…春馬くん?」
「あ、ああ、あの…っ」
「…もしかして、女の子に戻りたい?」
「え…う、うん!そう!」
な、なんで分かってくれたんだろう。
私って、もしかして思ってることが顔に出やすいタイプなのかな。
それとも、カラ松くんの察しが良すぎるだけなのかな。
「…キスするって、ことだよね」
「う、うん…あ、無理なら全然…」
「こっち来て」
「え…?」
カラ松くんが無理なら、十四松くんに土下座しに行こうと思ってたから、驚きだ。
周りを見渡しながら、人気の少ない場所を探しているカラ松くんが裏路地に入ろうとしている。
まぁ、ここなら人も来ないし、見られても大丈夫だけど…カラ松くんは本当にいいのかな。
キスって、学生にとって大事な大事な…。
「じゃあ…するよ」
「う、うん!?」
いや判断はや…!!
ちょっとは戸惑うかと思ってたのに、裏路地に入って早々、私の肩掴んでくるとか…見かけによらず積極的…!!
も、もしかして、カラ松くんが例の松野くんだからキスに積極的なのかな。
むしろキス大歓迎♡…みたいな…!?
そ、そんなまさか…。
え、こんな人気の少ない場所で二人きりでいて、大丈夫なのかな。
キスしたあとにそのままーーなんてこと、ないよね!?大丈夫だよね!?
「…僕とキスするの…嫌?」
「いやっ!全然!そんなことは…!」
しまった、また顔に出てしまっていたか。
カラ松くんの前では、平然を装って冷静に行こうと思ってたのに…。