第3章 ファーストキス
家を飛び出した私のあとを、走って追い掛けてきたカラ松くんが、息を切らしながら私に通学用カバンを渡してきた。
「カバン、忘れてたよ…なんで走ってたの?」
「え、えっとー…ちょっと、寝不足だったから、目覚ましがてらに…ね」
「寝不足…?あんまり眠れなかったの…?」
「ま、まぁ……あ、傘…」
「傘?」
「な、なんでもない!学校行こっか!カラ松くん!」
「う、うん…?」
学校へ行くためにはスクールバスに乗る必要があるから、今から家まで傘を取りに戻ってしまったら、遅刻確定だ。
ここまで走って来てしまった以上、もう後戻りはできない。
だから、もう傘は諦めて、雨は降らないことを祈るしかなさそうだ。
雨、降りませんように…。