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【おそ松さん】六つ子達が危険すぎる【R15】

第3章 ファーストキス




あと、1時間か…。苦しいけど、死ぬことはないと思うから我慢しよう。

見た目は高校生だけど、私の中身は、立派な大人だからね。

「う、ん…できる…」

「…!」

「ふぅ…」と息を吐きながら、私は「絶対にすぐ良くなるだろう」という思い込みの力で何とかすることにした。

そんな中、十四松くんは「本当に我慢できるのか?」と私のことを疑っているのか、一人で静かに百面相を繰り広げていた。

どうしたんだろう、十四松くん。
薄暗くてよく見えないんだけど…え、なんか顔近くない??

「……?…ぇ……」

元々近かった十四松くんの顔が、今は更に近くにある。

これは、まさか?と思ったのも束の間で、十四松くんは震えた手で私の肩を掴みながら、ゆっくりと目を細めていた。

「ぁ……」

こんな状況で、逃げられるはずもなく。
私は十四松くんに唇を許してしまった。

重なったのは、ほんの一瞬でーーー。


「…楽に、なった?」

「………」

十四松くんが私の返事を待っているのに、私は驚きのあまり頷くことしか出来なくなっていた。

曖昧だった十四松くんの顔が、今はハッキリと見える。
十四松くん、そんな顔してたんだ。

歯を食いしばりながら、頬を赤く染めている十四松くんが、私から目を逸らしている。

もしかしたら十四松くんは、キスが嫌だったのかもしれない。

私は副作用の効果が切れて、お陰様で元気になったし、女にも戻れたけど、十四松くんには嫌な思いをさせてしまったな…。

「…十四松くん、ありが」

「シー、今のアンタ声高ぇんだから…静かに」

「ぁ……」

そうだった。
今は女の子だから、声出したらすぐにバレちゃうんだった。
危ない危ない…。

こんな状況でも冷静な十四松くん、すごいな…。

他の兄弟を起こさないように、ゆっくりと布団から立ち上がった十四松くんが、タンスから例の薬を取り出して、私に差し出してきた。

「…ん、これ…薬」

「…!」

心の中で十四松くんに感謝を伝えながら、私は昼間飲んだ薬をもう一度飲み直すことにした。

「…ありがとう」

「別に…そっちが苦しそうにしてたら、こっちが迷惑だからしただけだし……寝る」

「あ…おやすみ、十四松くん」

怖い声で「寝る」と言いながら、布団に潜ってしまった十四松くん。
私はそんな彼の背中を見つめながら二度寝することにした。

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