第3章 ファーストキス
「…なぁカラ松」
「?…なに?おそ松兄さん…」
「なんでソイツがここにいんの?」
「え…」
おそ松くんが言っている"ソイツ"とは、私のことだろう。
今はもう寝る時間なのに、なんで俺たちの部屋にいるんだよ。って、おそ松くんは言いたいんだろうなぁ。
「えっと…春馬くんは、これからここで僕たちと一緒に寝ることになってるから」
「はぁ?なにそれ正気?ただでさえ狭いのにさぁ…誰が決めたんだよ」
「か、母さんだけど…」
う、罪悪感で心がズタボロに…!!
そうだよね、兄弟の中に他人が割り込むとか嫌だよね。ごめんねおそ松くん…!!
部屋の中にいるおそ松くん以外の松野くん達も、各々で「え…」みたいな反応を示しているので、当たり前だが、私のことを歓迎している人は誰もいないのだろう。
「す、すみません…お邪魔しちゃって…」
「おそ松兄さん、ごめん…」
いやカラ松くんが謝ることじゃないのに!!
大きな布団を寝床に敷きながら、申し訳なさそうにしているカラ松くんを横目に、ソファーに座っているおそ松くんは「別の場所じゃダメなの?」と言い放っていた。
おそ松くんの表情が、見るからに不機嫌そうだ。
そして恐らく他の4人も、口に出していないだけで、内心かなり嫌だと思っているのだろう。
ご、ごめんよ…みんな…。
「ひ、ひとりくらい増えても、そんなに変わらないよ、おそ松兄さん。春馬くん、太ってないし…」
「いやそういう問題じゃないだろ、分かってないなぁカラ松は…」
おそ松くんが、私の存在を受け入れられない気持ちはすごく分かる。
家族じゃない人が同じ家に住むだけでも嫌なのに、今日いきなり現れた人と同じ布団で寝るとか、もっと嫌だよね。絶対に。
ーーーこんなにも歓迎されていない状況で、私はこれから彼らと共同生活を送ることなんてできるのだろうか。