第3章 ファーストキス
銭湯では色んなトラブルがあったけど、体は無事に洗えことだし、あとは寝るだけーーーなんだけど、そういえば私ってどこで寝たらいいんだろう。
前世では、松野家のお母様に「居間に布団持ってくるから、居間で寝てね」的なことを言われてたから居間で寝てたけど、今回はなぜか何も言われていなかった。
どういうことだ…??
私が男としてお母様の前に現れてしまったから、未来が変わってしまったのか??
男なら、別に居間で寝なくてもいいでしょーってこと?
そ、そんな、まさか…。
嫌な予感がしつつも、帰宅してから改めてお母様に尋ねてみると、なんと私は六つ子たちと一緒に寝ることになっていた。
「カラ松と十四松とは仲がいいみたいだったから、一緒の方がいいかと思って…」って、お母様からはそんな風に見えてたんだ。
まぁ仲が悪いわけじゃないけど、私はまだみんなと出会ったばかりの赤の他人だから、誰も私と一緒に寝ることなんて望んでないと思うんですけど…。
なんて、お世話になっている側の私が言えるわけがなかったので、私は居間で寝ることを諦めることにした。
でも、六つ子たちと同じ布団で寝るのか…。
だ、大丈夫かな。
まぁ、今はまだ"例の松野くん"にそこまで好意を持たれていない可能性があるから、大事なのはこれからだよね。
変な雰囲気にならないように気をつけよう…。
「…あ、カラ松くん、おかえり」
銭湯から遅れて帰ってきたカラ松くんが、居間に入ってきた。
「た…ただいま」
「…?」
あれ、なんか今、カラ松くんに目を逸らされたような気がするんだけど…。
気のせいだったのかな…。
「…十四松は?」
「十四松くんなら、もう2階に…。わたっ…僕たちもそろそろ2階に行こっか、カラ松くん」
「…?春馬くんはどこで寝るの?」
「え、えっと…それが…」
お母様に言われたことを、そのままカラ松くんに伝えてみる。
するとカラ松くんは、驚いたのか目を見開かせながら固まってしまっていた。
「…そ…そうなんだ…」
「うん…ごめんねカラ松くん、僕が入ったら狭くなっちゃうよね…」
「だ、大丈夫だよ…!2階、行こっか」
動揺を隠せていないカラ松くんが立ち上がった。
カラ松くんは私が一緒に寝ることを受け入れてくれたけど、他の5人は、厳しいかもしれないよね…。
ふ、不安だ…。