第2章 お世話になります
モタモタしている私たちのことを見兼ねたのだろう。
十四松くんは、私の背後でカラ松くんに「早くしろよ、風邪引くだろ」と催促していた。
口は悪いけど、言ってることは優しいんだよね、十四松くん。
「…なに照れてんだよカラ松兄さん、体洗うだけだろ」
「そ、そう、だけど…だ、だって…」
「立花とは男同士だろ、なに気にしてんだよ」
「じゃ…っ、じゃあ十四松がやれよ!」
「はっ、はぁ!?!?」
「ちょっ、ちょっと二人とも、静かに…!」
私の背後で、二人が言い争っている。
体が男になっているとはいえ、元は女なので二人は気を使っているのだろう。
気を使ってくれるのは有難いけど、公共の場で喧嘩しちゃうと、他の兄弟が割り込んできちゃうかもしれないから、早く解決したいな。
でも、体を…かぁ。
まぁ私自身も、できれば自分の体は自分で洗いたいところだけど、銭湯には他にもお客さんがいるだろうから、迷惑をかけちゃう前に、ここは私が一肌脱ごう。
「あ、あの…!」
「あぁ?」
「僕は構わないから、二人に体洗うの手伝って欲しい…かも…」
「「…え」」
「…………ん?」
なんか変なこと言っちゃったかな。さっきまであんなにギャーギャー騒いでたのに…。
暗闇の中の沈黙が一番怖いんだけど…。
周りがどうなってるのか、めっちゃ気になる。目を開けたい…!けど、今は我慢だ。
…もしかして、嫌だったのかな。
「カラ松くん…?十四松くん…?嫌なら全然、断ってもらっても…」
「…分かりました」
「え?」
「あ"ぁ!?なに言ってんだよ、カラま」
「十四松、静かに…!!」