第2章 お世話になります
「はい、これ春馬くんの箸」
「あ、ありがとう、カラ松くん」
丸いちゃぶ台を囲むように座っている六つ子たちの間に割り込みながら、私は美味しい夜ご飯を、口いっぱいに頬張った。
静かな茶の間には、カチャカチャと食器の音だけが鳴り響いている。
右隣にはカラ松くん。左隣には十四松くん。
松野家の食事は、相変わらずとても美味しかったけれど、六つ子たちは誰ひとりとして声を出さずにご飯を食べていたので、私は少し寂しい気持ちになってしまっていた。
みんな、楽しく喋りながらご飯食べたくないのかな…。
「…おそ松くんたち、もう二階行っちゃったんだ…」
食べ終わった人から、一人ずつ立ち上がって、何も言わずに茶の間を出て行ってしまっている。
居間に残ったのは、私とカラ松くんだけだ。
「みんな、食べるの早いから…僕が遅いだけで」
「カラ松くん…」
心做しか寂しそうにしているカラ松くんが、眉を下げながらご飯を咀嚼している。
詳しい事情は分からないが、カラ松くんにはきっと、まだみんなと仲良くしたいという気持ちが残っているのだろう。
「…あの、立花さん、お風呂はどうするつもりで…」
「…え?お風呂は、私もみんなと一緒に銭湯に行くつもりだったんだけど…」
前世でも、私は銭湯の女湯に毎日入りに行ってたから、そんな心配しなくても私は一人で女湯に…って、ちょっと待てよ。
"女"湯は入れないじゃん!!
そういえば私、薬飲んじゃったから、今は男湯にしか入れないんだった…!!
どうしよう!!
「そ、その見た目で…?」
「ど、どうしよう…このままじゃ、男湯に入ることになっちゃうよ、カラ松くん…!」
「体は男になってるから、男湯に入っても問題はないんじゃ…」
「問題大ありだよ…!見えちゃうじゃん!み、みんなの…裸…」
「………ぁ」
「男の体を見られる分には問題ないんだけど、さすがに見えちゃうのは…ちょっと…」
「…じゃあ、僕が誘導するから、目を瞑って入ってみるとか…?」
「め、目を瞑る…!?!」