第2章 お世話になります
「…行くよ」
「う、うん…」
私と同じように、少しだけ緊張している様子のカラ松くんが、出入口の襖に手をかけた。
ーーく、来る。みんなの冷たい視線が私に来る…!
「ただいま…みんな、帰ってる?」
「…あれ、さっき公園にいたやつじゃん。もううちに来てたんだ」
「え…チョロ松兄ちゃん、あの人…誰?」
「母さんが言ってた人じゃない?ほら、同い年の子が来るって言ってたじゃん」
「あー…」
知らない人がいきなり二階の部屋に入ってきたので、末弟のトド松くんは混乱してしまっていた。
あぁ、なんか懐かしいな、この感じ。
未来で見た時は、みんな雰囲気が変わっちゃってたから、誰が誰だか分からなかったけど、今ならよく分かるよ。
眼鏡をかけてるのがチョロ松くんで、まだ一言喋ってないのが一松くんだ。
こうして見ると、本当にみんなそっくり…とか考えてる場合じゃないんだった。
「は、初めまして、僕、立花春馬です…!よろしくお願いします…!」
「………」
あれ、無視…!?
やっぱり同性には厳しいのかな…。
「……おそ松兄ちゃん、僕なんかあの人の顔、見たことあるような気がするんだけど…同じクラスにいなかったっけ」
「えー俺はよくわかんないや、男には興味ないし」
「いや男じゃなくて、女の子でいなかったっけ」
「え…っ」
ば、バレてる。トド松くんにバレちゃってる!
そういえば、おそ松くんとトド松くんは私と同じクラスだから、この顔に見覚えがあってもおかしくはないか。
性別が変わったからといって、顔も別人レベルに変わるわけではないからね。
こ、こうなったら…。
「あ…僕、双子だから…もしかしたら、妹のことかもしれない…デス…」
「双子…?」
本当は一人っ子なんだけど、こうでも言わないと、トド松くんに怪しまれちゃうから、春奈と春馬は双子だって言うことにしておこう。
これなら、違和感はないはず…。
「………」
「………」
…双子で納得したのか、会話が終わってしまった。
ここで「双子なんだー!」みたいな会話が始まらない辺り、おそらく彼らは普段からそんなに会話をしていないのだろう。
せっかく個性豊かな兄弟が6人も揃ってるのに…。
まぁ寂しいけど、みんな思春期だから、仕方がないか。