第2章 お世話になります
「お世話になります…!!」
「ごゆっくり〜」
これから一年間はお世話になるので、台所で家事をしていた六つ子のお母様にご挨拶をしたあと、私は実家から持ってきた荷物たちを整理することにした。
「立花さんの荷物、それだけ…?」
「ほ、本当はもう少しあったんだけど…女物ばっかりだったから持って来れなくて…」
「あ…そ、そっか…」
「パジャマとかどうしたらいいんだろう…」
「…たくさんあるから、僕のを貸すよ」
「え、いいの…?ありがとうカラ松くん!」
カラ松くんは優しいなぁ。
でも、カラ松くんは嫌じゃないのかな。
私みたいな他人が、自分の家で寝泊まりしたりするの…。
前世では女の子だったから、誰も私に文句は言ってこなかったけど、おそ松くんたち、同性には厳しいこと言ってくるかもしれないよね…。
ふ、不安だ…。
「…他のみんなにも、ご挨拶しないとなぁ」
「律儀だな、アイツらなら2階にいると思うけど」
「2階かぁ…みんな、私のこと受け入れてくれるかな…」
「…別に、6人が7人に変わったところで、誤差だろ。何も思われねぇよ」
私の荷物整理を手伝ってくれている…ように見せかけて、ただただ寝転がっている十四松くんが小さくそう呟いた。
そうか、誤差か…。
みんな、なんだかんだ言って、6人でいることを大切にしてるんじゃないのかな。
今は不仲でも、兄弟の絆はあると思うんだけど…。
「…そろそろ2階行く?立花さん」
「…うん、そうするよ。挨拶は早めに済ませておきたいからね」
カラ松くんと十四松くんは、拍子抜けするくらいすんなり私のことを受け入れてくれたけど、他の四人は厳しいだろうなぁ。
みんな難しいお年頃だし…。
慣れない階段をゆっくり登りながら、私は深呼吸をすることにした。
私の前方で「ここが俺たちの部屋だよ」とカラ松くんが、部屋の場所を教えてくれている。
懐かしい。
そういえば六つ子たちは、ここでいつも一緒に寝てたんだっけ。
私は居間で寝てたけど、六つ子たちは昔から仲良く一緒に寝てたんだろうなぁ。