第3章 A…
“じゃあ、仕事なら誰とでもキス出来んのかよ?”
もし、僕かヤケクソにでもなれたら、きっと言ってたんだと思う。
でもどっか冷静な僕もいて…
だってさ、“仕事なら”なわけでしょ?
本気なわけじゃないんだし…なんてさ、割り切れちゃったりしてさ。
そりゃ…嫌だよ?
(確定じゃないけど)好きな人が、自分以外の人と仲良くしてたり、ましてやキスなんかしちゃったらさ、普通に腹も立てば、嫉妬だってするもん。
でもさ、仕事だから…ね!
僕は自分で自分を慰める…とは違うけど、鼓舞するかのように頷き、再びハンドルを握り始めた翔に向かって笑顔を向けた。
「ねぇ、お腹空かない?」
「確かに。何か食って帰るか…」
「マジで? あ、勿論、翔の奢りだよね?」
だって僕、人に奢れる程まだ売上ないしぃ〜
「ったく、仕方ねぇな…。つか、何で俺には出来て、姫にお強請り出来ねぇかな…」
「それは…何でだろ?」
答えなんて分かってるよ。
女と話すのは勿論のこと、〝女〟って存在が、僕は苦手だから。
ちゃんと分かってる。
「何食いたい?」
「何でも良いの?」
「あんま高くないモンな?」
「えっとね、ラーメン食べたい!」
店の近くなんだけど、前に看板見かけて、ずーっと行ってみたかったんだ。