第3章 A…
クスクスと肩を揺らす翔を(ビルとビルの)隙間に残し、僕は先に通りに出た。
「おい、右手と右足一緒に出てんぞ」
笑いを含んだ口調で後ろから言われるけど、そんなのどうだって良い…っていうか、自分でも分かってるよ、変な歩き方になってることくらい。
キス一つで、ありえないくらい自分が動揺してるのだって分かってる。
なのに…
なのにさ、超絶人の気持ちに鈍感な翔ときたら…
「なあ、今度はセックスでもしてみるか?」
なんて言うから、僕は今度こそ硬直してしまう。
「お、お、お前…、自分が何言ってるか分かってんの?」
「分かってるけど?」
いやいや、それ絶対分かってないでしょ…
「や、や、や、やり方とか、知ってんの?」
あぁ…、僕の馬鹿!
問題はそこじゃないのに…
「知ってる…つか、ナニにナニを突っ込むだけだろ?」
「そ、そう…かも知んないけど、男同士…だよ?」
「だーから、それがどうした、っての。男だろうが女だろうが、本能じゃね?」
確かに翔の言う通り、性別関係なくセックス出来ちゃうのが〝本能〟だとしたら、そこに感情ってやつは一切必要ない…ってことになる。
それってめちゃくちゃ寂しいし、めちゃくちゃ虚しくないか?
確実に、後で後悔するじゃん?
分かってんのに、さ…