第3章 A…
閉園時間ギリギリまで、僕達は目一杯アトラクションを楽しみ、遊園地を後にした。
「疲れた…」
車に乗り込んだと同時に、翔がポツリ呟く。
けど、その表情は普段見せることのないくらいの笑顔で…
またしても、僕の心臓がドクンと脈打った。
それも何度も…
それこそ、心臓の音聞こえちゃうんじゃないかってくらい、何度も何度も…
僕はとうにか気を紛らそうと、帰り際に翔に買って貰ったマスコットのキーホルダーをギュッと握り締めた。
なのにさ…
「そんな強く握ったら、ちぎれちまうだろ?」
なんてさ、僕の手に手を重ねて来るもん。
顔がありえないくらい熱くなる。
「あ、あの…さ、一つ聞いても良い?」
何とかその状況を誤魔化したくて、僕は翔に質問を投げかけた。
「さっきの人…、好き…なの?」
「ん? ああ、あれはただの客だよ。別に好きとか、そんなんではないかな」
その言葉に、不思議とホッとしてしまう僕。
「で、でもさ、キス…してた…じゃん?」
「ああ、あれ見てたんだ?」
「うん…」
「あれは仕事の延長っつーかさ、新人ホストのお前には分かんねぇかもだけど、ホストなら普通に良くあること…かな」
〝普通〟
そのたった一言に、それまで加速状態だった僕の心臓に、チクリと棘が刺さったような痛みを感じた。