第3章 A…
かなりイヤイヤだったけど、遊園地なんて来たの久しぶりだし、せっかくだから楽しもうと思った。
好きでもない女と腕組むのだって、〝仕事〟と思えばとりあえず我慢できたし。
でも一つだけ…どうしても耐えらんなかった。
それまで、絶叫系は髪が乱れるだの、ホラー系すらメイクがどうのって言ってた二人が、唯一OKしたのが観覧車だった。
「翔、高所恐怖症なんじゃ…」
来る途中、ハンドルを握りながら、翔がポツリ呟いたのを、僕は聞き逃してなかった。
「大丈夫…なのか?」
「全然大丈夫じゃねぇけど、仕方ないだろ、これも仕事なんたから」
「それはそうだけど…」
口では平気な振りしてるけど、実際は全然平気じゃないよな?
足、めっちゃ震えてる(笑)
心の中でクスリとしながら、僕は翔達が乗るゴンドラを見送り、僕は長い爪の手に引っ張られるようにして、後続のゴンドラに乗り込んだ。
女は当然のように僕の隣に座り、超ミニのスカートから伸びた足を組み、豊満な胸を押し付けるようにして僕の腕に両腕を絡めた。
「ねぇ、見て?」
女が腕に絡めた手で、僕達の丁度真上に位置するゴンドラを指差した。
「え…」
言われて見上げた僕は、多分…だけど、今一番見たくたくないであろう光景を目にしてしまい…