第2章 R
「えっと…、その…、なんつーか…」
しどろもどろになって、しかも持ってき場を無くした手で頭を掻いたり、ヒールの高い靴でよろけそうになったりと、まるで挙動不審な僕を、翔がニヤニヤとした顔で見下ろす。
「まさかお前…童…」
「ち、違う…けど、違わない…かもしんない…」
うん、これがきっと正解…なんだと思う。
「は? ちょっと何言ってんのか分かんねぇけど?」
うん、分かんなくて当然かも。
「だから、その…」
「一応、女と付き合ったことはあるんだよ…な?」
「それは、その…」
ない…って、きっぱり言えたら簡単だし、楽なんだろうけど、これからホストクラブで働こうってしてんのに、女性経験ゼロな上に、実は女より男の方が好き…なんて言えない…よな。
しかも、抱くより抱かれる方が…なんてさ、もっと言えない。
「まあ…どっちでも良いわ。別に童貞が駄目ってわけでもねぇし、なんなら姫に筆下ろして貰っても良いしな」
「えっと…、それはどういう…?」
「お前、筆下ろしの意味も知んねぇのかよ」
「そ、それくらい知ってるし…」
流石にこの年だから、筆下ろしの意味くらい分かってるさ。
っていうか、筆下ろし自体は済んでるんだけど…ね?