第2章 R
「よし、そろそろミーティング始めっかな」
翔が両手を描いた打ち鳴らす。
そのたった一言と音とで、一瞬にしてその場の空気が一変する。
フロアに、所謂“掃除組”と呼ばれる、売り上げが少なかったり、僕みたいな新人のキャストが集められ、内勤を中心に、、それぞれ注意事項やら持ち物確認なんかがされて行く。
そして最後に、革張りソファにふんぞり返っていた翔が立ち上がり、僕の肩をポンと叩いた。
「自己紹介しな」
「えっと…、智…です。宜しく…です」
翔に背中を押され、自分の意思とは関係なく一歩前に出た僕は、ガチガチにセットされた髪をクシャッと掻きながら頭を下げた。
その時、どこからか分かんないけど、「聞こえないよ」って声が聞こえて来て…
頭を下げたままの僕は、目一杯息を吸い込んでから、普段滅多に出すことのない、大きな声で挨拶をした。
でもさ、それても足んないだってさ…
なんか…
僕が思ってたホストの世界って、案外表面的っていうか…さ、全然想像とは違ってるんだなって。
けっこう体育会系…なのかな。
勿論、売上が物言う世界ではあるんだけど、年齢関係なく上下関係あるみたいだし、声出しとかもあったりしてさ。
ちょっと大変そう…かも。
「あ、因みにコイツ、まだ童貞だから。宜しくな」
こんな風に弄られるしね?
っていうか、童貞じゃないもん!