第2章 R
長身な二人に両脇を抱えられたまま、廊下の奥の更に奥へと引き摺られた僕は、ロッカールームのプレートが見えた瞬間、何故だか分かんないけどホッとした。
だってさ、ホスト業界の悪い噂とかさ、ニュースとかであるじゃん?
だからマジで怖かったんだもん。
「貴重品とかあったりする?」
「いや、何も持ってない…です」
昨日まてホームレスだった僕だから、現金は勿論のことスマホだって持っていない。
もし貴重品と呼べる物があるとしたら…
それは翔にかりた服とか靴とか…くらいかも。
「そっか、じゃあとりあえず鍵だけ預けておくね」
「はい…」
僕は受け取った鍵をポケットに突っ込むと、再び長身二人に脇を掴まれて…
っていうかさ、これって何か…
ガキンチョがよくやってる、父ちゃんと母ちゃんの間でブランブラーンってやつみたいじゃん?
現に僕の足、ちょっと浮いてる…
「で、こっちがキッチン…って言っても、別に料理を作るわけでもないし、洗い物が殆どなんだけどね」
言われて覗き込んだそこは、確かに雅紀の言う通り、家庭用のキッチンとは広さも違えば、設備だって違ってる。
しかも、壁一面のでっかい冷蔵庫には、缶チューハイやらシャンパンの瓶やらがぎっしり…
それも綺麗に整頓されて詰め込まれてて、グラスまでしっかり冷やされている。