第2章 R
紫のスーツを纏い、ファーで飾られたコートを肩に掛けたソイツは、僕に向かって中指を人差し指をピンと立てると、着いて来いとばかりに顎をしゃくった。
「えと、あの…」
翔の背中とソイツを交互に見ながら、僕が迷っていると、真冬にも関わらず額から汗を流す雅紀が駆け寄って来て…
「もう、潤ちゃんたら怖がってんじゃん」
僕とソイツの間に割って入った。
「俺は別に…」
「ゴメンね〜、コイツ別に怒ってるとかじゃないからさ」
「は、はあ…」
別にさ、怒ってるとかは思ってないけど、何ていうか…
威圧感(?)みたいなのは滅茶苦茶感じてたし、ド派手な出で立ちに圧倒されてはいたけど…ね。
「あ、あの、大野智…です。今日から宜しく…です」
僕が軽く頭を下げ挨拶をすると、ソイツ…潤は眉の端をピクリとさせてから、僕の鼻の頭を人差し指の先で弾いた。
「随分と教育のしがいがありそうだな」
「え…? うわっ…」
意味が分からず首を傾げる僕の肩に、潤の腕がガシッと回され、思わずよろけてしまった僕を、今度は雅紀の腕が腰を掴んで支えた。
「あのさあ、潤ちゃん乱暴過ぎだって。見てよ、智ちゃんビックリしちゃってんじゃん」
ってさ、心配してる風なこと言ってっけど、顔、滅茶苦茶笑ってない?
つか…、首でも絞められるんかと思った…