第1章 A
「お前、歳は?」
何本目かのビールを空にしたタイミングで、煙草の煙を吐き出しながら言った。
「俺? 23たけど…」
ホームレス生活をしてるせいか、随分とケチ臭くなった俺は、空になった筈の缶を耳元で振りながら答える。
けどさあ…
「マジで言ってる?」
「マジだけど?」
いくら久しぶりのアルコールで、若干酔っ払ってるとはいえ、自分の歳を間違えることもないし、なんなら嘘ついたって仕方ないし…
そんな驚くか?
「だって、絶対俺より若いと思った思ったのに…」
「は?」
…ってことは何か?
コイツ、俺より年下…ってこと?
なんだ、慣れない敬語とか使ったりして、損したかも。
「改めてだけど、俺は櫻井翔。歳はお前…つーか、あんたより一つ下」
そう言って翔は俺に向かって頭を下げた…のも束の間、俺の顎をガシッと掴むと、眉間に皺を寄せ、あからさまに怪訝な顔をした。
「ここ、髭剃り残してんじゃん」
「そ、そう、か?」
言われて自分で顎付近を撫でてみるけど、別に、気になる程でもない…つか、これくらい普通だろ?
「あのさあ、俺らの仕事って見た目が一番なの。だから髭の剃り残しとか、言語道断なわけ」
「は、はあ…」
一応は頷いてはみるけど…
仕事…って、なんだ?