第1章 A
やたらとフワフワしたバスタオルで全身を拭き、翔が用意してくれた(っぽい)下着と、これまたやたらと肌触りの良いパジャマを着込んだ俺は、廊下の突き当たりにあるガラスドアを開けた。
「あの…って、えっ?」
恐る恐る覗き込んだそこは、廊下とは全く違う…、まさしく別世界の状態で…
多分…だけど、コンビニかなんかで買った弁当の空か入った袋が、部屋のあちこちに落ちてるし、脱いだ服はまるで抜け殻みたくなって散らばってるしで…
「汚ねぇ…」
ポツリ呟いた俺に、革張りのソファでふんぞり返る翔が、鋭い眼光を飛ばして来た。
って言うか、俺に散々なこと言っておいて、コレかよ…
人のこと言えねぇぞ?
俺は足でゴミを掻き分け、翔の座るソファへと向かうと、翔と同じようにソファにふんぞり返った。
「お前も飲むか?」
「良いの…か?」
「飲みたくなかったら別に…」
「い、いや、飲みたい! 頂きます!」
差し出された缶ビールを奪うように受け取り、乾いた喉に一気に流し込む。
「ぷはぁ〜、うまい」
何ヶ月かぶりのビールが、火照った身体に染み渡る。
「けっこう良い飲みっぷりじゃん」
翔が肩を揺らして笑う。
つか、コイツ…
笑うとけっこう可愛い顔してんじゃん。