第1章 A
「な、何見てんだよ…」
羞恥に駆られた俺は、咄嗟に胸と股を手で隠し、視線から逃れるように翔に背中を向けた。
「いや、思ったより良い身体してんな、って思って。何かスポーツとかしてたとか?」
「いや、特に何も…」
だいたい、運動とかあんま好きじゃない。
なのに、体育の成績だけは、いつも良かったけど。
あ、実技だけだけどな?
「ふーん…、それに案外着痩せするタイプみたいだし」
「そう…か?」
自分では気にしたこともないけど…
「ま、いいや。兎に角、風呂入って、その全身に小縁ついた垢落とせ」
ひでぇ言い方だな…
これでも週に一回はシャワー浴びてんだけど?
俺は溜息を一つ落としてから、バスルームのドアを閉め、頭からシャワーを浴びた。
ラックに並んだ高級そうなシャンプーで髪を洗い、これまた高級そうなボディソープで身体を洗うと、少しだけリッチな気分になった。
長風呂は得意ではないけど、せっかくだからと湯船にも浸かったけど、湯が熱過ぎて、結局耐えられたのは一分程度。
それでも風呂から上がった時には、身体がサッパリしてたし、なんなら一枚脱皮したような気分にもなった。
って、やっぱり垢にまみれてたんだろうか?