第2章 大正時代へ
そこから数週間、あまね様に良く似た可愛らしい子供達が代わる代わる食事を運んできてくれたり、話をしにきてくれた。
あまね様は私の体を清めたり、着替えを手伝ってくれた。
献身的な看護のおかげで、私の傷もかなり癒えた。
お館様への謁見が許されたのはここに来て1ヶ月後のことだった。
立派な客間に通され、お館様を待つ。
(…私の代のお館様は、強くあろうとしたものの、精神が弱かった。今はどうか…)
そんなことを考えていると、部屋の襖が開き、あまね様に付き添われて入ってきたのはまだ若そうな青年だ。
鬼舞辻の呪いのせいか、目元の皮膚が痛々しい。
しかしまだ目は見えている様だ。
(鬼舞辻め…幾代に渡って忌々しい呪いをかけおって…)
私は唇を噛む。
「…傷は癒えたかな?」
「っ…!」
聞いた人全てを魅了するであろう不思議なその声色に、私は思わず平伏した。
そしてこちらを見据えた青年の、圧巻の立ち振る舞いに鳥肌が立った。
(…この人が、現代のお館様。見事だとしか言いようが無い)
「…お初お目にかかります。滝、参上仕りました。このたびは命を救って頂き、至極難有仕合(しごくありがたきしあわせ)に奉存候(ぞんじたてまつりそうろう)。」
私は平伏したままそう言う。
「うん。助かってよかった。屋敷の入り口に人が倒れていたと聞いた時はびっくりしたんだよ。この屋敷は、鬼殺隊の柱ですら知らない場所に隠されているから、普通の人はまず来られないからね」
顔を上げると、お館様は微笑んでいる。
(私の頃のお館様の屋敷の場所とは違うようだ。鬼舞辻に見つからないように転々としているのかもしれない)
「…お館様。先代の成哉様が存命だったのは何年前でしょうか?」
(何年後に飛んで来たのか、早く知りたい)
私が突拍子もない質問を口早に問いかけると、お館様は少し驚いたような表情見せ、またすぐ微笑む。