第8章 水柱との任務 伝説の人斬り鬼
第三者視点ー
人気の無い山奥。
漆黒の闇の中を、二人は鬼の気配を探りながら静かに歩いていた。
義勇が先、その背中をが追っている。
聞こえるのは、二人が歩くたび鳴る地面の音だけだ。
「義勇。今日はよろしく」
「……」
「なぁ義勇。趣味はなんだ?」
「……」
「無いのか?じゃあ任務が無い日は何をしている?」
「……」
「なぁ、筋肉を見せてくれないか?」
「……」
「水柱はいつの時代も流れるような剣技で素晴らしい。そなたの太刀筋も見るのが楽しみだな」
「……」
「好きな食べ物は?」
「…少し黙ってくれないか」
水柱、冨岡義勇との合同任務中であるは、何を聞いても答えない義勇の態度にむすーっと頬を膨らませる。
「そなた、なぜ喋らない?親睦を深めようとしているのに」
「…俺は喋るのが嫌いだ。それにお前と仲良くしようとも思っていない。そして名前で呼ぶな」
「はっきり言うなあ…」
振り返るどころか、表情一つ変えずに言って歩き続ける義勇に、は大きくため息をつく。
「今回探している鬼は噂話に近いのだろう?」
「……」
「"伝説の人斬り"鬼…か。刀を使う鬼はそういない。楽しみだな」
は答えない義勇を気にするのをやめたのか、
楽しそうに鼻歌を歌っている。
「…楽しみと思える頭が羨ましい」
義勇はの方を向くこともなくズバッと言う。
「まともに言葉を返したかと思えば皮肉…」
は呆れたようにふんと鼻を鳴らす。
「…それに俺は水柱じゃない」
義勇はぼそりと言う。
「?何を言ってるのかさっぱりわからん。ではそなたはなんなのだ?ただの陰湿な引きこもり男か?」
はさっぱりだ、というポーズをする。
「…俺は…」
義勇はまただんまりを決め込む。
はそんな義勇の表情を見て、上げていた手をゆっくり下げる。