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愛を紡いで呪いを断つ

第6章 霞柱との休息 新型の釜


「…さっきも言ったでしょ。お腹が減ってたから食べたの」

無一郎はフイっと顔を逸らすと、また門へ体を向き直す。
だが歩き出そうとはしない。


「…無一郎?」

「…ついてくるなら早くしなよ」

無一郎は小さな声でつっけんどんにそう言うと、ゆっくり歩き始めた。




「…行く!」





は満面の笑みで答えると、駆け出して無一郎の後を追ったのだった。














ー…





「ひぇっ…」

はあるものを見つけると無一郎の影に咄嗟に隠れる。





「…ねぇ。車を見るたび僕の後ろに隠れるのやめてくれない?」

無一郎はジトッとした目で背後にいるに言う。





「恐ろしい…鉄が走ってる…あの禍々しい形の物体が我々に当たったらと思うと…」

は引き攣った顔で車が通り過ぎるまで無一郎の後ろに隠れ、去ったらどくという動作を繰り返していた。


「君は轢かれても死ななさそうだから大丈夫だよ」

「……どういう意味だ…」

は遠い目をしていたが、目的のものを見つけるとコロっと表情を明るくした。





「無一郎!釜があったぞ!」

は釜を売っている商屋の前に行き、じっくり眺める。




「百年以上時が進んでいれば当たり前かもしれんが、米を炊くのが楽になる仕組みになっていてすごいな!」

「…最新型の物を買えたらの話だけどね。高いから」

「そうだな!無一郎の屋敷の釜も最新型の物だがよく買えたな!」

「…君みたいに貧乏じゃないから」

「ぐっ…」

「そもそも君はどうやって生活してるの?お金は?」

「ありがたいことに屋敷はお館様から与えてもらった。お金も必要な分だけ頂いた」

「うわぁ…脛かじりじゃん」
無一郎は軽蔑するような視線をに向ける。

「…その通りだ。返す言葉も無い。鬼狩り頑張ります」

はほろりと泣く。



「…僕の屋敷の近くに住んでるの?」

「あぁ!別に無一郎の近くにと志願したわけではないぞ!たまたまだ!」

「あっそ。あの釜はあげるから近いからってもう屋敷には来ないでよね」

「……」




無一郎は迷いなく最新型の釜を手に取り、会計をしようとする。

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