第6章 霞柱との休息 新型の釜
「…鬼殺隊の存在は前から知っていた。きっかけがあってな。小料理屋を辞めて入隊したんだ」
「へぇ…」
無一郎の返事は、聞いたくせに聞いてるのか聞いていないのか分からないようなものだったのに、はとても嬉しそうにはにかんでいる。
食べ終わった無一郎に急須の茶を入れ湯呑みを渡すと、はよいしょと立ち上がり、台所へ向かう。
「…無一郎!まだ残ってるぞ、ふろふき大根!」
は明るく笑いながら、お皿に入ったふろふき大根を無一郎に見せる。
「たくさん食べたし…もういいかな。とっておいて、また食べるから」
「また食べてくれるのか!嬉しいな!」
嬉しそうなを一瞥すると無一郎は立ち上がり、小さくご馳走様と言って食器を台所へ運ぶ。
そういえば、と食器を置いた無一郎が問いかける。
「君は食べないの?」
「私は料理しながらつまむのが好きだからもう食べた!」
「行儀悪いね」
「……作った者の特権と言ってくれるか?」
は再び落ち込むも、そのまま外へ出ようとする無一郎に声をかける。
「どこに行く?」
「………新しい釜を買いに町に行く。突然来た泥棒に釜を取られそうだから」
「ど、泥棒……私も行く!!」
「…はぁ。まだついてくるつもり?」
大きなため息。
「昨日の鬼狩りで毒をくらってな。今日は一日休まねばならんのだ。問題無く動けるのだがお館様から休めとのご指示があってな。要するに暇だ」
「…で、この数日で鬼は何匹倒したの?」
「三体(杏寿郎の分も含めてだがな)」
「一ヵ月で本当に五十倒せるわけ?」
「…がんばります」
無一郎はふたたびため息をつくと、門を出ようとする。
「無一郎!」
「何?大きい声出して…」
無一郎は怪訝な顔での方を振り返ったその時だった。
「…ありがとう、ご飯を食べてくれて」
は少し震えた声で無一郎にそう言った。
無一郎は目を開き、驚いた表情でを見る。
の表情が余りにも綺麗で、そして余りにも悲しそうだったから。