第6章 霞柱との休息 新型の釜
「まぁまぁそう怒るな。で、釜はどこだ?」
「君、話聞いてた…?」
無一郎は刀の柄を握って抜刀しようとする。
「わーーーーーーー!!!待て待て!!
斬るのは私の米を食べてからにしてくれ!!」
はぐすんと泣くと、トボトボ無一郎の屋敷の台所へ向かおうとする。
「は?なに勝手に入ろうとして…」
「まぁ待っていろ!決して台所を覗くで無いぞ…!?」
はにっこり笑い、足取り軽く屋敷内へと姿を消す。
「鶴の恩返しみたいな事言いながら行っちゃった…頭痛い…」
理解出来ない生物がいる、と無一郎はこめかみを押さえ、仕方なく自身も屋敷へと入ったのだった。
ー…
「見てみろ無一郎、ピカピカの米だ!この時代の釜はすごいな!吹き上げで温度を調整しなくても炊けるんだな!」
自室で本を読んでいた無一郎に、は炊き上がった釜の米を嬉しそうに見せに来る。
ふっくら艶々としており、米特有の甘いにおいが漂う。
「…へぇ、そんな顔して意外と上手に米が炊けるんだね」
無一郎は本をパタンと閉じる。
そういえば先ほどから無一郎と呼び捨てされているが、突っ込むのも面倒になり、無一郎はそのまま聞き流すことにした。
「…すまないがどんな顔だ?」
はしょぼんとした表情で聞き返す。
「…鏡見たことないの?可哀想」
無一郎はツンとした顔でを見上げる。
「こ、これでも戦国の世の鬼殺隊内では剣術小町と言われていたんだぞ…」
は蚊の鳴くような声でそう言うと、釜を持って食卓に向かおうとする。