第5章 音柱との任務 忍びの鬼
「…口移ししてやろーか」
別に減るもんじゃねぇし、と天元はニヤリとして持っていた解毒剤を口に含もうとする。
口移しで解毒剤を飲ませたとに言ったら、どんな反応をするのか単純に見てみたい。
天元は膝をつき、自身の顔をの顔に近付ける。
「……」
天元の唇がの唇まであと少しで触れるといった時だった。
「ごふぉっ…」
は口から泡を拭き、何とも言えないものすごい顔になった。
「…………顔、面白すぎて萎えたな」
のあまりに間抜けな顔に、天元はやっぱりやーめたとまたため息をつき、手で口に解毒剤をねじ込む。
しばらく様子を見ると、顔色も良くなる。
「ゔ、ゔーん…火炙りだけは…やめてくれ…」
「…なんだよ火炙りって」
夢の中でまだ忍とでも戦っているのか、謎の寝言を言って目覚めないをよっこいしょと背負う。
解毒剤を飲んだといえ、体に何かあってはいけない。
とりあえず天元は自身の屋敷へと撤退することを決める。
「…かる。メシ食ってんのかよコイツは」
そうボソリと呟いた天元の表情は、とても優しかったのだった。
ー…