第5章 音柱との任務 忍びの鬼
ー…
「天元様!」
まもなく夜明けという頃、雛鶴が出迎える。
須磨、まきをは待ちくたびれて玄関で眠ってしまっていた。
「おー。起きてたのか雛鶴。ありがとな」
天元は屋敷へ素早く上がると、を寝室へと運び、用意されていた布団の上に寝かせる。
「ぐぅ…むにゃ…撒菱が刺さって痛くて動けぬ…」
「コイツハッキリした声でしつこく阿呆な夢見てるな」
うなされた顔で寝言を言っているを、天元は呆れた様子で見る。
「…どうでしたか、月柱様は」
雛鶴はくすりと笑い、手拭いでの顔の泥を拭ってあげる。
「…結局こいつの目的やら能力やらは分かんねえままだが、使えるか使えないかで言ったら使える。ってかバケモンだよコイツは」
天元は隊服を脱ぎ、雛鶴から渡された着流しに着替える。
「煉獄から文でこいつの戦いっぷりは知ってたがな。予想以上だ。ただ…」
「…ただ?」
雛鶴が先の答えを促す。
「…マジで一切の感情が感じられねぇんだよ。鬼に対しての。なんつうか、ワザと"憎んでいるようにみせてる"っつーか」
天元はどかっと座って胡座をかき、手を組む。
「…もし鬼を滅したいという目的でないのなら、わざわざ戦国の世から時を越えてまで…成し得たい事とは何なのでしょう」
雛鶴は物憂げにを見つめる。
「…ま、それこそこいつの事を暴くのは時透かもしれねぇな」
「…霞柱様?」
「あぁ。コイツ、なんか時透に執着してるしな。派手に面白そうだ」
「天元様ったら」
2人は顔を見合わせてふっと笑うと、しばらくの寝顔を見つめていたのだったー。