第5章 音柱との任務 忍びの鬼
「忍の鬼よ、こんな惨い事はやめてとっとと死んでもらえぬか?」
はそう言いながら目を細めて鬼の瞳の奥を探る。
ーなんと十二鬼月ではない。
それなのに柱の天元の気配を即察知するという能力を持っている。
これは逆に厄介だ、とはため息をつく。
「…やだね。案外楽しいんだよ、このやり方。人間の泣き叫ぶ声、絶望する顔。それを殺す快感。やめられないね」
忍はクックと笑う。
「下衆が。」
はそう言って薄く笑いながら鬼を見据える。
「下衆って言わないでよ。忍はどんな手を使っても物事をやり通すからさ。んで、お前さんはどうやって俺を殺すつもり?鬼狩りが使う刀は?」
丸腰のを見て心配そうな顔を装う。
「そう、刀の持ち合わせが無くてな。まさかこんなすぐ出てくるとは思わなんだ」
はやれやれと首振り、手を挙げる。
「あっそう…じゃあお前さんが先に死にな。美味しく食べてあげる」
鬼がニィ、と笑った瞬間。
おでこ、心臓、足にクナイが投げつけられる。
は体を捻って間一髪でかわす。
「…人体の急所を狙うのが上手いな。はぁ…面倒だ…」
は首をコキコキと鳴らして気だるげに言う。
鬼はそんなを見据えてさらに笑うと、背中の短刀を取り出し、に距離を詰めると喉元狙って短刀を突き刺そうとする。
は寸前の所で腕を掴み止めると、そのままの勢いで鬼を蹴り上げる。
攻撃を防いだと思われたの喉元には小さく斬り傷ができた。
蹴られた鬼は何の痛みもなさそうにくるりと後方転回する。