第5章 音柱との任務 忍びの鬼
目玉は飛び出ており、肉は腐りかけている。
見るにも耐えない光景だが、遺体すら残らないと思っていた身内がそれを見つけた時、かけがえのない存在になる。
「あ、あなた…良かった…首だけでも…」
がそう言ってヨロヨロと首に近づいた刹那。
の首後ろ目掛けて鋭利な武器が飛ぶ。
手裏剣。
は大丈夫なのか?
天元は木の上にするりと登って観察する。
「…んー?避けた?」
かなりの至近距離で手裏剣は投げられたが、に当たっていない。
寸前では体を傾け避けたのだ。
鬼はついにその姿を現す。
銀髪、筋肉質な体、全身黒の忍装束。
忍姿の鬼は手でくるくると手裏剣を回して遊びながらゆっくりに近付く。
「……」
は静かに振り返る。
メソメソと泣く女の表情から、感情の感じられない表情へと変化していた。
「…そなたが忍の鬼か」
「…美味そうな女が来たと思って出てきたら、お前さん鬼狩り?面倒だね」
鬼はそう言いつつも楽しそうにしている。
「最近ちょこちょこ来る強そうなツレも一緒に来てるみたいだね。まぁ攻撃してくる気配は無いから良いけど」
鬼はチラリと天元の方を見る。
「……」
天元はチッと舌打ちする。
あの鬼、俺様の気配に気が付いてやがるー
天元の気配の消し方は完璧だ。
それなのに気が付いているということは、血鬼術の類いで侵入者が分かる仕掛けがされているということか。