第5章 音柱との任務 忍びの鬼
ー…
「…そろそろか」
鬱蒼としている夜の森。
動物の気配すら感じさせない静かさだ。
「あぁ。地味で不本意だが、ここから俺はお前から離れてつけていくぜ。」
「分かった。すまないが私が合図をしたら日輪刀を投げてくれ。できれば鬼目掛けてな」
「…俺が渡さなかったら?」
天元は意地悪くニヤリと笑う。
「…はぁ。本当に忍は信用できんな。その時はその時だ。何とかするしかない」
「ほお。素手で鬼に勝つつもりかよ」
「いや、まずはそなたを失神させて刀を奪ってから鬼の相手になるな」
「はっ、俺を失神!ド派手だな!やれんのか?」
は目を細めて天元を見据える。
「…さぁな。まぁ、そんな意地の悪いことは考えぬ事だな。そなたにとって良くないことが起きるぞ」
「…あ?」
天元は冷たく笑うを見て、険しい顔になる。
「…テメェ、嫁達になんか仕込みやがったのか?」
天元の嫁三人は優秀だ。
下手な小細工などすぐに見破れるはずだ。
心配する必要などない筈なのに、天元は嫌な感じが頭をよぎる。
「…そなたは忘れているぞ。私は御伽話のように時を超えた人間だ。やれぬ事は無い」
「……」
化粧をしているせいもあり、美しさと恐ろしさが共存しているの表情に、天元は参ったと手を挙げる。
「…はいはい。分かった分かった。意地悪言って悪かった。ちゃんとド派手にドンピシャで投げてやるから安心しな」
天元は頭をぽりぽりかく。
「ありがとう天元。さすが良い男だ」
はにっこり笑うと、一人で夜の森を進んで行った。
ー…
「あなた…あなたどこなの…っ!?」
は迫真の演技で夫がいなくなった妻を演じている。
天元はそんなをすげえな、と薄く笑いながら後をつける。
少し歩いたその時、鼻につく臭いがしてきた。
ー死臭だ。
それも随分時間が経っているような臭い。
天元は鼻に手を当てる。
天元と嫁達が偵察に行った時、こんな臭いはしなかった。
ーという事は、は一発で鬼と遭遇する可能性が高いという事だ。
「っ貴方…!!!!!!いやぁっ…!!!」
はあるものを見つけ、くずおれる。
ー複数の首が晒されている。