第5章 音柱との任務 忍びの鬼
「っいたい!!私は忍…隠密が苦手だ。昔から本当に忍には手こずってばかりだからな。鬼狩りの時にどうしてもお殿様の屋敷内に忍び込まねばならん事があったのだが、入った瞬間奴らはねちっこく攻撃してくる。忍はしたたかで、賢く、従順だが、面倒で、しつこく、鬱陶しい…」
「分かった分かった。文句はもういいから黙れ。そのド派手に面倒な忍が今回の鬼っつう訳だ。諦めろ」
「うわぁあぁ……私は帰る」
「帰るんじゃねぇ」
「ぐぇっ」
天元は素早く立ち上がり帰ろうとしたの着物を強く引っ張りどしんと尻餅をつかせる。
「…一ヶ月前からバタバタ人間が殺されてる。首だけ残して後は食われてる。身内が突然いなくなって森の中に探しに来て、身内の首を見つけ、気が動転して駆け寄った人間をまた殺して食って。それを繰り返してるみてえだ。首を囮にしてやがんだよ。胸糞悪ぃ」
天元はそう言いながらも冷静だ。
「…そなたも忍とあって感情の抑制が上手いな。まぁ、忍のやりそうな姑息な手口だ」
すでに体制を整えていたはお茶を飲み干し、コトンと湯呑みをちゃぶ台に置く。
「先に偵察に行った隊士も2人やられた。んで俺様が行ったんだが、一週間探っても出てこねぇ。嫁達も行かせたがさっぱりだ」
天元は後ろにもたれるように手をつき、だるそうにする。
「忍は生きることに命を賭けているからな。勝てぬと分かる相手にノコノコ顔を出したりしない。どうせそなた気配も消さず行ったんだろう。忍のくせになんだその派手な額当ては…」
「うるせえな。地味なんて俺様に合わねえ!気配は消したんだよ。俺の嫁達も優秀なくノ一だからヘマはしねぇ」
「…まぁ、そなたも頭一つ抜けた優秀な忍なのは見て分かる。ということは向こうもなかなかの手練だ。十二鬼月の可能性もあるな」
「そうだ。だから下手な隊士を送っても殺されるだけ。そこでお前が現れたって訳だから、使わねぇ手はない」
「……はぁ。」
は雛鶴にお茶のお代わりを請求すると、またすする。