第4章 炎柱との任務 子供を喰らう鬼
ー…
「よし、終わった」
子供の遺体を街近くの山のふもとまで運び、土葬して手を合わせたと杏寿郎は、また街まで戻ろうとゆっくり歩いていた。
「まずは一体か。ものの十五分程度で始末出来たのは良いが、先は長いな」
はぐーっと背伸びをする。
「…あの女の鬼、子供を殺しはしたが食ってはいなかったようだな」
杏寿郎はむぅ、と手を顎に当てる。
「ああ。なかなか稀な鬼だ。経緯は分からんが死んでからも自分の子供を想うあまり怨霊になり、気がつかないうちに鬼になったような感じだ。」
は立ち止まると、星が瞬く夜空を見上げる。
その表情は先程よりもいくらか緩み、憂いを帯びている。
「…鬼も人。人も鬼。鬼狩りとして躊躇いなく首を刎ねねばならんと分かっているが、どうしてもその背景を知りたくなる」
「……」
胡蝶カナエとは少し違うが、彼女もまた鬼に対して慈悲の心を持ち合わせているのだろうか。
「それにしても良く子守唄を当てたな!俺は知らない子守唄だった!」
「格好で何となく肥後国の出の女かと思ってな。あの子守唄は肥後国に主に伝わるものだ。私は小さい頃から各地を旅していたから聞いたことがあったんだ」
「成程。物知りだな!あの女の鬼も君に感謝していた。そして俺も、君のような戦い方もあるんだと学ぶことが出来た!感謝している!」
杏寿郎は素直に感心していた。
鬼は忌むべき存在であるが、確かに鬼は元来人間だったのだ。
どんな事情があれ人の命を奪った鬼は万死に値するが、鬼になった経緯も様々だ。
それを理解した上で鬼殺をするは、心に余裕があるのだろう。
それがきっと強さにも繋がっている、杏寿郎はそう思った。
「…鬼を殺さない理由を探しているだけかもしれんぞ」
そう言って寂しげな表情を浮かべながらも、はありがとう、と答える。
ー滝は、一体どのような想いを抱えてこの時代に来たのだろうか。
彼女の発言や動作の節々に、気になる事が沢山あると杏寿郎は目を細めて思う。