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愛を紡いで呪いを断つ

第1章 呪言


「…私は、鬼を狩っている時以外ずっと考えておりました。」

は数歩先を歩き、真後ろにいた黒死牟にゆっくり向き直る。



「…絶対に勝てない相手に勝つにはどうしたら良いのかを。」




月の光を浴びて淡く光る刀の先を、黒死牟に向ける。
その刀の色は漆黒だ。


「……」

黒死牟は微動だにしない。






「そんなこと考えるのは可笑しいですよね。だって、もう勝てないことを認めているのだから。どれだけ鍛えようが、心が負けを認めたらもうそこから進むことが出来ない」

「……」








は尚も1人で話し続け、ひゅう、と冷たい風が2人の間をすり抜ける。



「…貴方も同じ。鬼になってまで強さを求めているのに心が埋まらない」

はそう言って、儚く微笑む。





黒死牟はの発言などまるで聞いていないかのように態度を変えず、ゆっくりとに近づく。







「…無惨様からの提案だ」



その言葉と同時に、目にも止まらぬ速さでの首に黒死牟の刀が突きつけられる。

構えていたにも関わらず反応出来ないその速さに、は諦めたように細くため息をつく。


黒死牟のその刀は血走ったように赤く、人の眼がウジャウジャとついていて、刀の形をした生き物のようだ。









「…提案?」

も刀を突きつけられたにも関わらず、表情を変えることなく聞き返す。












「…このまま私に斬られて無様に死ぬか…
……私の子を…孕み育て…
醜悪な人間を殺す鬼を育てるか…選べ」













の目の端がぴくりと動く。













「ふっ…あはは…さすが鬼舞辻無惨…!!私の…人間の心まで利用してっ…!!」








長い間の後、はそう言って突然狂ったように笑い出す。

黒死牟はその様子をじっと見つめる。





「貴方も貴方ですよ。何を今更。要するに、身体を殺されるか、心を殺されるかどちらか選べというのですね」






笑い終え、は冷め切った表情で黒死牟を見据える。

そしてゆっくりと鬼黒死牟の刀先を掴み、避けるようにする。刀を掴んだせいでの手からはだらりと血が流れる。
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