第1章 呪言
ー次の瞬間、黒死牟に抱きついた。
と対峙している間、何にも動じなかった黒死牟の目が初めて見開かれた。
「…どちらも選ばない。私はずっと貴方をお慕いしています。だからこそ…いつか必ず殺す。そして私も一緒に死ぬ。鬼舞辻無惨と貴方に鬼殺隊が壊滅させられかけている今この世では殺せなくとも。"然るべきその時"に必ず。」
はそこまで言うと、鬼黒死牟から少し離れて哀しげに微笑み、目を閉じる。
「…そうか」
鬼黒死牟はそう一言呟くと、躊躇うことなくの首を斬り刎ねたー。
「っ…」
鬼黒死牟はの首を斬ったと同時に、自身の胸元に鈍い痛みを感じたため、胸元に手を当て視線を向ける。
目視ではなんの傷も無いが、違和感が残っている。
次に黒死牟が顔を上げると、斬り捨てたはずのの首と身体は無くなっていた。
刀にはの血がついており、間違いなく斬った感触もあったはずなのに。
「…」
黒死牟のその切ない想いのこもった声は、誰にも聞かれることなく静かな夜の闇に溶けていったー。