第4章 炎柱との任務 子供を喰らう鬼
「夜な夜な路地裏で車を引く音が聞こえる怪事が起きている…?」
「あぁ。その音が聞こえた時に子供がいると、子供が攫われるっちゅう噂だ」
食堂の前で掃き掃除をしていた店主によると、ここ一月程前から不審な音と共に子供が忽然と消える怪奇現象が起きているとのことだ。
確かに街では昼間にも関わらず、子供だけで出歩く姿は少なく、親が子を守るようにして歩く姿が目立っていた。
「子供の血肉を好いて食べる鬼かもしれんな。畜生め。早々に殺さねばならない」
は無表情で刀の柄を撫でると、日が沈み始めて赤く染まる空を見上げる。
「…同感だ。未来ある子供の命を奪う外道は早々に斬る」
杏寿郎は肩に乗った羽織をバサっと振り落とすと、に目配せする。
「噂のある路地裏まで移動しよう。」
「承知」
二人は気配を探りながらしばらく歩いた。
ー…
ギィッ…
「「……」」
すでに日は沈み、人通りはほぼ無い。
歩き続けて一刻。
ようやく荷車を引きずるような音が聞こえてきた。
「子が出歩いていないから鬼も出てこないかと思ったが、意外と音が聞こえたな。だがまだ姿が見えん」
「あぁ」
と杏寿郎は抜刀し、ゆっくりと歩く。
ーその時だった。
「ヒック…うぅ…」
突如乳母車のようなものを押し、泣きながら歩く女の鬼の姿が二人の目の前に現れた。
車を引く音はこの乳母車の音だったようだ。
乳母車は片輪しかなく、ギィ、ギィと音を立て、女が倒れないように持って平行を保っている。
女は頭巾をつけ、薄汚れた着物を着ている。
と杏寿郎は刀を女に向けて構える。