第4章 炎柱との任務 子供を喰らう鬼
「…先代の炎柱は、命を粗末にしたのでは無い。上弦を倒すという重大な責務を全うしただけなのではないだろうか!」
「……私なんかを庇ったからだ」
「?すまない!聞こえなかった!」
「…いや、何でもない。早速街に出て聞き取りを行おう」
は杏寿郎から顔を背けて表情を見せないようにしながはぐーっと背伸びをし、刀の柄をゆっくり撫で上げながら屋敷の門へと向かう。
「…そうだな!」
聞き返されたくないのだろうー
杏寿郎は深追いすることなく、自身も羽織を靡かせながらの後を追ったのだった。
ー…
「読めぬ。読めぬぞ。なんと読むのだこの看板は…とてつもなく良い匂いがする!」
はとある食堂の前でぴたりと立ち止まる。
「ビフテキだ!君がいた戦国の世にはさすがにまだ無かったか!」
「ビフテキ!?何だそれは!」
「牛の肉を厚切りにして焼いたものだ!」
「牛の肉だと…!?少し怖いが食べてみたい!」
「君が柱と名乗るに相応しい人物と分かり、鬼を倒したら俺がご馳走しよう!」
「まことだな!?言質は取ったぞ?」
は目を爛々と輝かせ、ビフテキ店を見てじゅるりと涎をすすり、名残惜しそうにしながら歩き出す。
「…君は思ったより明るい性格なんだな!」
ニコニコと笑うに、歩幅を合わせながら歩く杏寿郎もつられて微笑む。
「私達はまさに命懸けの職業だ。死ぬ時は暗い闇の中だ。だから御天道様の元では少しでも生を感じたい。特に笑っている時は生きている実感があるからな。」
は目を細めて晴れた空を見上げる。
「……その通りだな」
杏寿郎はそんなの横顔を、素直に綺麗だと思った。