第2章 2(主人公視点)
友人達が矢継ぎ早に問い掛けて来る。
友人達だけでなく教室内にいる女子生徒達も彼の容姿に釘付けになりテンションが上がっている。
面倒な事になった。
「高校の時に知り合った友達」
「タメ?」
「うん」
「社会人かと思った」
呪術師として働いてるから社会人だよ。
心の中で呟き鞄のジッパーを閉めた。
当の五条君は視線など意に介した様子もなく堂々と此方に向かって歩いて来る。
今は五条君を大学の敷地から出すのが最優先だ。
「行くぞー」
「分かったから目立つような事だけはしないで
あと、そのサングラスチンピラみたいだから丸いのに戻した方がいいよ」
「あぁ?」
初めて見る四角いレンズの華奢なサングラスはチンピラそのもの。
学生時代より丸くなったとはいえ、尊大で強気な物言いは相変わらずだ。
多分、仕事中やその関係者にこんな喋り方はしてないだろう。
「丸もどうかと思うけど今のよりはマシだよ」
「やなこった!」
「別にいいよ
ただのアドバイスだから」
そう告げて教室を後にする。
「あっそ」
「何処の店舗に行くの?」
「渋谷か原宿」
「社会人なんだから渋谷区とか新宿区からは卒業しなよ」
「あ?オフィス街だろ」
「新宿渋谷界隈を遊び場にするのを卒業したら?って事」
取り敢えず最寄り駅まで歩を進める。
五条君が着いてきてるかどうかなんてどうでも良かった。
「なあ…まだ傑に惚れてるのか?」
「好きだよ」
そう、これが本音。
夏油君以外の男性を好きになれる気がしないし、夏油君の事を一生好きでいたい。
彼を好きになれた事が誇らしい。
一緒にいたい、傍にいて彼を支えたい。
自分の気持ちを肯定する事で私は夏油君から自立する事を選んだ。
彼の思想と私の存在は相性が悪すぎる。
夏油君にも私の本心は告げたので、こうしてバランスをとる事で随分と気が楽になった。
もちろん五条君の粗っぽいサポートや硝子の気遣いあっての話ではあるが、夏油君の事で夜も眠れないとか作業が手に付かないなんて事は殆ど無くなっていた。