第2章 2(主人公視点)
友人達の会話が中断され、視線が再び私に集まる。
画面には“五条悟”の文字が流れている。
申し訳ないが五条君からの連絡は嫌な予感しかしない。
「もしも~し」
『おー元気か?』
「元気だよ
どうしたの?」
『スタバの限定メニュー飲みに行こーぜ』
「は?」
通話ボタンを押して携帯を耳に押し当てれば、機械を通した五条君の声が聞こえる。
突拍子もない誘いに思わず声が出てしまった。
よくある事だが全く慣れないのだ。
『用事で大学の近くにいるんだよ
つーか門の前にいる』
「えぇっ!?」
マジですか…
五条君目立つからそういうの控えてよ。
『まだキャンパス内にいんだろ?』
「まあ…」
『奢るからさっさと来い!』
「五条君あのね…」
“ブツ”
続きを言おうとしたら切られた。
強引すぎるでしょ…
夏油君がいなくなったら実質友達ゼロ状態も納得の気性である。
「どうかした?」
「知り合いが近くまで来てるらしくて…」
「なら行ってあげなよ」
「そうだよ、スタバは明日でも大丈夫だし」
「…でも…」
どちらに転んでもスタバには行くんですよ。
だったら先約と行くのが道徳的でしょ。
「大丈夫だよ
抜け駆けはしないから」
「その代わり明日は絶対だからね」
「4人で行こうね」
ノートパソコンの電源を落としながら友人達が気を遣ってくれる。
私も緩慢な動作でノートパソコンと筆記用具を仕舞ってゆく。
理解力のある友人って素晴らしい。
「ありが「遅い!!」
私が友人達に感謝の言葉を言えば、デカくて歯切れの良い声が被さり掻き消された。
「…」
「…」
「…」
友人達だけでなく教室に残っていた生徒達全員の視線が声の方に集まる。
其処には黒のセットアップを着た長身、銀髪、サングラスの男が…
「げっ…」
「遅いから迎えに来た」
勘弁してよ…
教室中に不穏な空気が立ち込める。
完全に部外者だとバレている。
「名前…知り合い?」
「まさか彼氏?」
「マジで?超カッコイイじゃん」
友人達が矢継ぎ早に問い掛けて来る。
友人達だけでなく教室内にいる女子生徒達も彼の容姿に釘付けになりテンションが上がっている。
面倒な事になった。