第2章 2(主人公視点)
あの夜、五条君が別れ際にこう言った。
“稟議とか審査とか色々あるから時間が掛かる”
まぁ、そうだろうよ。
なんやかんやで法人だろうからね。
「名前も成人式の写真見せてよ」
「写メも無いの?」
「…あるけど」
「見せてよ」
大学の講義が終わり友人達が教室で成人式の写真を見せ合っている。
正確には携帯で撮影した写真、いわゆる写メだが…
「知り合いと一緒に写ってるやつしかないよ」
「うちらだって同中の友達と写ってるやつだよ」
「私もそうだよ、だから見せてよ」
皆がニコニコしながら圧を掛けて来る。
成人式の知り合い=同中らしい。
溜息を吐きながら携帯を開きボタンを押す。
写真の保存フォルダを開けば同じ中学の友人と撮影した写真の他に2人の男性と異なるタイミングで撮影した写真が表示された。
長い黒髪を結い上げたスーツ姿の男性と銀髪に青い目の派手な服を着た男性。
それぞれとツーショットの写真だ。
てか五条君の服のセンスどーなってんのさ…
こんなのハイブラ厨しか着ないでしょ。
「ちょっと待って」
友人3人に囲まれ期待の眼差しを向けられる。
この時点で男との写真は絶対に見られてはいけない物だと確信できた。
「可愛いじゃーん!」
「めっちゃ可愛い!」
「超かわいい!」
同じ中学の友人と撮影した写真を友人達の方にかざせば、社交辞令の可愛いが飛び出す。
全員が全員に対して同じ事を言う平等な世界だ。
「別の友達と撮ったやつは?」
「二次会の写真とか無いの?」
「集合写真でもいいよ」
友人達の催促は続く。
なぜ皆は他人の友人を見たがるのか。
見ても意味ないでしょ。
「二次会は行ってない
中学時代の同級生は嫌いだから」
「マジで?飲み会行ってないの?」
「楽しいのに」
「分かる、うちもめっちゃ楽しかった」
勝手に3人が各々の地元の二次会ネタで盛り上がり始めた。
携帯を引っ込め、別れ際に撮影した五条君との写真を眺める。
夏油君より五条君との写真の方が多くなる日が来るとは…
あの頃の私が知ったらどう思うだろう。
“ブーッ…ブーッ…ブーッ…”
「うわっ!?」
画面をぼーっと眺めていたら、突然ディスプレイが着信のそれに切り替わり音を立てて振動し始める。
「どしたの?」
「ごめん電話」
「出なよ」