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残穢

第1章 1(夏油視点)


「夏油様、何か欲しい物はありますか?
 成人のお祝いにプレゼントいたします」

突然の申し出に笑いがこみ上げてくる。
注がれたビールのせいではない。

「ありがとう気持ちだけ頂いておくよ
 私が欲しい物は私にしか手に入れる事が出来ないからね」

そう…私が欲しい者は私でなければ手に入れる事は出来ない。

「夏油様にしか入手できない物…ですか?」

「ああ…私でなければ駄目なんだ」

「特級呪霊とか怨霊ですか?」

「確かに欲しいね
 でも違うよ」

華やかに着飾った世間一般では美しいとされる女性の誘惑も私には効力がない。

美しいとか醜いかという話ではないのだ。
名前かそれ以外か…単純にそれだけだ。
そもそも自分が欲しい物は自分で手に入れてきた。
だから一番欲しい物も私自身で手に入れる。



「夏油様って無欲ですね」

「そんな事は無いさ
 欲しい物は沢山ある
 それを自分で手に入れているだけだよ」

集団の中心にいても空虚で孤独な感覚は消えない。
むしろ高専時代より悪化している。
まるでガラスの小部屋に隔離されているようだ。

ただ、この孤独も虚しさも君がいれば全て埋まるだろう。
そう結論付けた瞬間、自分の中にあった感情のストッパーが外れた気がした。
恋しい人にぶつけるには重すぎる感情にタガが壊れたのかもしれない。

覚悟は決まった。
名前…私は君を攫う。












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